それでもボクはやってない

megumi

2007年12月01日 16:30


DVDを借りに行ったら、何となく目について借りてみました。
周防正行監督作品「それでもボクはやってない」
そういえば、以前テレビで取り上げていて見たいと思ってたなぁって・・・

ということでネタばれもあります


ストーリーは主人公の男性が、ある日満員電車に乗ったとき痴漢に間違われて・・・という痴漢冤罪の話。捕まった当初から、「自分はやってないんだから、捜査してちゃんと裁判をしてもらえば、裁判官はきっと判ってくれて、はれて自分の無罪は証明されるはず!」と信じて、頑なに「やってない!」と言い続けているのに・・・警察も検察も裁判官も、彼が犯人だという前提のもとに、手続きや裁判を進めていく。。。見ているこちらはものすご〜くイライラしながら、もどかしい思いをして見ちゃうんだけど・・・

触られたという女の子の証言以外は、彼が犯人だという証拠も、彼が犯人ではないという証拠もなく。。。それでも、必死に自分の無実を証明しようと鑑定ビデオを作製したり、目撃者を探したりする主人公に対し、被害者がそう言ってるんだから!ということと、それぞれの証言の揚げ足をとったりすることに終始する検察側
裁判官においても、主人公に対してものすご〜く意地悪な質問なんかもしたりして、見ている第三者の私としては「あなたは彼が無実かもしれないってほんの少しでも思ってる???」と聞きたくなってしまうような感じなわけです
しかも彼が犯人だと決まったわけではないのに、被害者の一方的な証言で彼自身4ヶ月近くも拘置所での生活を余儀なくされて・・・これで本当に無実が証明されたら?この時間は帰ってこないし、社会的立場や周りの視線だって・・・

最終的には、1年近くかかった裁判の結果、裁判官の判決は有罪。もちろん家族や友人は納得いかないし、見ているこちら側も「えーーー!?」っと思ったわけですが・・・私の目線・・・彼の身内目線だったことに気がつきましたか?もちろん映画自体が彼目線で作られているわけだから、当たり前なのかも知れないけど、見終わって色々と悶々としながらふと感じたんです。

じゃあもし彼が無実を勝ち取ったとき、私が痴漢の被害者または、その母親の立場だったら?って・・・

実際に触られて嫌な思いをした被害者がいて、犯人だと思っていた人物が無実だったと釈放されたら、自分でその人が犯人だと言っておいて勝手かもしれないけど、じゃあ私を触った犯人はだれなのよ!?と思ってしまう。でも1年もたってたった一度触ってきた犯人をいまさら見つけるのなんて、それこそ不可能だろうし・・・諦めろっていうことか・・・そう考えると、誰でもいいから、姿のある犯人にその罪を償って欲しいと思ってもおかしくはないかもしれない・・・

でももしこれが痴漢ではなく、殺人や放火などのもっとひどい犯罪だったら?
無罪の人を犯人にする努力をする前に、どうして他の可能性も考えながらもっと丁寧に捜査を進めてくれなかったのか?と腹が立ってしょうがい。だって時間の経過とともに、確実に調べられたはずの証拠なんかもなくなっていってるだろうから。しかも一度犯人と疑われた人物が無罪になって釈放されたりしたら・・・心の行き場をなくしてしまうだろう。

「裁判所は真実を明かにするところと思っていた。でもそれは違った。裁判所は、限られた証拠を元にとりあえず有罪か無罪かを決める所だった」「真実は神のみぞ知るなんて言葉があるけど、それは違う、僕は真実を知っている。彼は間違いを犯したのだ」

最後に主人公がこう語るシーンがあって、なんだか複雑だった。それと一緒に近いうちに始まるといわれてる裁判員制度の事をちょっと考えた。
映画のようにストーリの中でその時起こった全ての出来事を見る事ができるなら、私は彼を無実だと間違いなく言い切れる。でも、実際にはそんな事があるはずもなく・・・主人公の言うように、その時に集められた証拠や証言を元に自分の考えを決めなければいけない。その時に自分がどちらの気持ちに寄り添うかによって、事件そのものの見方も全く違うものになってしまうという不安。真実を知らない自分が誰かを裁いてもいいのだろうか?という疑問。

人はあくまで人なのだから間違いを犯すこともある、でもその間違いのおかげで、誰かの人生を、命を奪うことになってしまったら・・・考え出すと、そこはかとなく深い。。。

裁判といえば、夕方のニュース番組なんかでイラストで見る裁判風景しか見たことのない私ですが、映画の中では、最初の取調べから、拘置所内での様子、どういうふうに裁判が進んでいくのか、またその間に検察や弁護士とどんなやり取りをしていくのか、さらには、裁判官や検察の内情なども盛り込まれていて、随分とわかりやすく描かれていました。
私自身、主人公と同じように「もし自分が何かの間違いで捕まったとしても、何もしてないんだからすぐに無罪放免になるはずだ♪」とお気楽に思ってましたが・・・見終えてからの感想は「こんな制度ではたして私の無罪は証明してもらえるのか?」と思わずにはいられませんでした。

H21年度内には始まる予定の裁判員制度。
どうなっていくのか。。。正直不安です。。。





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